柴田慶信商店の足あと -5-|MAGEWAPPA

現在わっぱビルヂング店では、《MAGEWAPPA》の茶器を展示中です。

写真左より、《菓子器 KASHIKI》《重器 KASANEKI》《盆 BON》でございます。

東北芸術工科大学デザイン工学部助教授(当時)鈴木敏彦様およびその研究室、教授の日原もとこ様、写真家の斉藤さだむ様が主体となり、2001年からおこなわれた調査研究の一環で、研究室から提案されたデザインを、柴田慶信商店が製作したものです。

《MAGEWAPPA》は、東北地方の地場産業を発掘、訪問、実態調査をし、デザインの観点からの再評価をするという試みのもと行われた調査研究成果の一つです。将来的な展望として地域、社会全体の活性化を期待したこの取り組みは、柴田慶信商店にとっても貴重な経験といえます。

伝統的な曲げ木工の技術に加え、円筒形の底部はアーチの形状を取り込み、浮遊感を表現したとのこと。全体がひと連なりに見えるような滑らかな形状は、伝統的な曲げわっぱのイメージを刷新したように感じます。

東北芸術工科大学のアーカイブにて、コラボレーション品の報告を含む研究紀要を読むことができます(インターネットにて閲覧が可能)。 紀要には実製作に至るまでの打ち合わせも記録されており、「モダンな雰囲気を持った伝統的なものを作りたいと考えている」と、茶器を実際に使う若い宗匠のニーズを伝える場面も(pp.59)。

この調査研究の当時、原材料は樹齢200年以上の天然秋田杉でした。数年後に天然秋田杉の供給停止が決まり、現在では、北東北の高樹齢天然杉を主材料としております。大切に保管してきた天然秋田杉は、一部の製品に限定しての使用です。

天然秋田杉枯渇後の対策について聞かれた、柴田慶信、昌正父子はこのような言葉も返していました。(pp. 61)

白太部分を生かしたデザインを考えていかなければならない。漆の力をかりる。

20年後に誕生した「源平」が、真っ先に頭に浮かびました。この他にも、近年の柴田慶信商店の取り組みにつながるようなピースが、報告書にうかがえます。更には曲げわっぱのこれからに繋がるヒントが見つかりそうです。

《MAGEWAPPA》は2003年、ニューヨークのコンテンポラリー・ファニチャー・フェア(ICFF2003)でも紹介され、高い評価を得たとのことです。

わっぱビルヂング店にお越しの際には、ぜひご注目くださいませ。


引用・参考元
鈴木敏彦、日原もとこ、斉藤さだむ(2004)
『東北の素材とかたちの研究 その1/大館の曲げわっぱ』、
東北芸術工科大学紀要、2004年紀要第11号、pp. 50-69.
http://archives.tuad.ac.jp/wp-content/uploads/2020/03/tuad-bulletin11-04-suzuki.pdf

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